使用済みとなったサーバやHDDのデータ消去及び物理的廃棄を行うときには、正しい知識が無いとコンプライアンスの徹底になりません。
データ消去に精通した弊社技術顧問の鈴木寿人氏により、HDDを運用する上で必要な技術知識をご紹介いたします。
グリットアーツ技術顧問
鈴木 寿人
1980年 山形富士通株式会社入社、HDDの設計・開発・製造に従事。データ消去・データリカバリビジネス立ち上げ、日本初(世界2番目)米NSA認定データ消去装置の開発を行う。以降都築電気株式会社を経て、2021年にグリットアーツ技術顧問に就任。
HDDとは
HDDとは補助記憶装置の一種。
磁性体をスパッタリング(蒸着)したプラッタを高速回転させ、磁気ヘッドによりプラッタ表面にデータの読み書きを行うデータ記憶装置です。
HDDの歴史
はじまりは、1956年IBMがIBM 305 RAMAC (商用コンピュータ)の一部としてIBM350(磁気記録装置)が開発されました。磁気ディスクは50枚でサイズは24インチもありました。
その後、小型・軽量・大容量化競争が始まり、
24“→14”→12”→10.5”→8”→5.25”→3.5”→2.5”→1.8”へと小型化が進んでいき、現在のようにコンピュータにディスクを搭載するようになったのは、1980年にシーゲイト・テクノロジー社が開発したST-506が初まりです。
*ST-506は、5.25インチ、フルハイトで5MBの容量。
さて、黎明期(1980-90年代)の最も競争が激しい時期には約50~60社のメーカーがHDDの製造に参入しており、米国はIBM、Maxtor、Quantum、シーゲイト・テクノロジー、日本では日立、富士通、NEC、エプソン、富士電機、松下寿電子、アルプス電気、YEデータなどが軒を並べていました。
しかし現在では吸収と合併が繰り広げられた結果シーゲイト・テクノロジー ,WD(ウエスタン・デジタル)、東芝デバイス&ストレージの3社のみとなりました。
2000年代になると家電製品での利用も増え始めHDレコーダーやゲーム機、カーナビなどに搭載されて行くことになります。
昨今ではSSDとの競合に晒されていますが、技術革新を重ね大容量、低ビット単価等で将来も共存する見込みとなっています。
では次に、図解で内部構造を簡単にご説明します。
HDD部品製造会社
ヘッド | 内製 | シーゲイト・テクノロジー,WD(HGST) |
専業 | TDK | |
メディア (プラッタ) | 内製 | シーゲイト・テクノロジー , WD(HGST) |
専業 | 昭和電工、富士電機* | |
サブ基板 (プラッタ)アルミ | 内製 | シーゲイト・テクノロジー , WD(HGST) |
専業 | 昭和電工、東洋鋼板、ウエカツ工業、Kaifa、富士電機 | |
サブ基板 (プラッタ)ガラス | 専業 | HOYA |
ブランク材 アルミ | 専業 | 古河電工、神戸製鋼所 |
ブランク材 ガラス | 専業 | HOYA |
スピンドルモーター | 専業 | 日本電産,ミネベアミツミ |
サスペンション | 専業 | ニッパツ、TDK、サンコール |
と、お分かりの様にHDDには意外にも日本企業の技術が多く採用されています。
言い換えれば日本の技術がないとHDDを生産できないと言っても過言ではありません。
TDK https://www.tdk.com/ja/featured_stories/entry_025.html
昭和電工 https://www.sdk.co.jp/products/45/69/1290.html
東洋鋼板 https://www.toyokohan.co.jp/ja/products/md/index.html
ウエカツ工業 https://www.uekatsu.co.jp/electric_div
HOYA https://www.hoya.co.jp/business/electronics.html
古河電工 https://www.furukawa.co.jp/product/electronic/ele_parts/memory.html
神戸製鋼所 https://www.kobelco.co.jp/products/almi/sub_straight.html
ミネベアミツミ https://www.minebeamitsumi.com/product/rotary/1181998_6167.html
日本電産 https://www.nidec.com/jp/technology/casestudy/hdd/
ニッパツ https://www.nhkspg.co.jp/products/it/hdd.html
サンコール https://www.suncall.co.jp/corporate/biz_harddisk.html
*富士電機は、2021年7月29日にハードディスクドライブの磁気ディスク媒体事業から撤退することを発表しています。
では、現在HDDを出荷している3社のマーケットシェアを見てみましょう。
HDDマーケットシェア
2020年の世界出荷台数シェアでは、1位がシーゲイト・テクノロジー 2位がWD(ウエスタン・デジタル)3位は、東芝デバイス&ストレージの順となっています。
皆さんがご使用されているHDDは世界的なシェアと比較していかがでしょうか。
さて、第一回はHDDの歴史、構造、シェアなどのHDDの概要に触れました。
次回はHDD内部構造をより詳しく説明いたします。
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