データ消去の重要性について~ ハードディスクドライブ(HDD)技術講座【第2回】

データ消去の重要性を理解するための技術講座の2回目になります。

前回はHDDの歴史やマーケットシェアをご紹介しました。

~データ消去の重要性について~ ハードディスクドライブ(HDD)技術講座【第1回】

今回は、HDDの動作や構造をご説明します。

グリットアーツ技術顧問

鈴木 寿人

1980年 山形富士通株式会社入社、HDDの設計・開発・製造に従事。データ消去・データリカバリビジネス立ち上げ、日本初(世界2番目)米NSA認定データ消去装置の開発を行う。以降都築電気株式会社を経て、2021年にグリットアーツ技術顧問に就任。

内部構造のおさらい

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HDDとは補助記憶装置の一種。
磁性体をスパッタリング(蒸着)したプラッタを高速回転させ、磁気ヘッドによりプラッタ表面にデータの読み書きを行うデータ記憶装置です。

それでは一つ一つ機能と動作を見ていきましょう。

プラッタ(磁気ディスク)

ディスク表面は、磁気記録層でデータを記録します。(0/1:N⇔S)

単位はビット。(最小ビット:20~30nm)

磁気記録媒体用基板は、アルミ基板とガラス基板の2種類です。

最新の基板枚数は10枚の実装(1インチハイト)が可能です。
プラッタの回転数は、4200~15,000 RPM(回転数非公開もあります)

磁気ヘッド

データの書き込み、読み込み(W/R)を行うが、書き込み、読み込みしないときは、ディスク外周へ退避します。

また、磁気ヘッドは磁気ディスク上を浮上しており、その浮上量は数nm~10nmとなり、HDI(ヘッドクラッシュ)を回避するため、精密なDFH制御(Dynamic Flying Height Control)が行われてます。

また、Write/Read時は熱アクチュエータに通電することで、熱膨張で素子部を突き出します。

その為Write/Read/Seek時で、それぞれ浮上量が異なります。

  • 書き込み(Write)は、ライトヘッドのコイルに電流を流し、漏れ磁束によりディスクを磁化します。
  • 読み込み(Read)は、リードヘッド(MR素子)がディスク表面の磁束をセンスします。

記録方式には、水平磁気記録方式と垂直磁気記録方式があり、昨今では垂直磁気記録方式が主流となっております。

アクチュエータ

ヘッド位置決め精度(半径方向)は、媒体上の位置決め情報に基づき、nmレベルを要求されます。

基本は、VCM(Voice Coil Motor)で制御するが、更にDSA(Dual Stage Actuator)にてFine tuningを行います。さらに最新HDDでは、TSA(Triple Stage Actuator)を採用した製品も出てきております。

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また、ヘッド制御のバラツキ要因としては、ディスク速度(周速5-60m/s)ディスク表面のうねり・振動、振動外乱等が挙げられます。

スピンドルモーター

磁気ディスクの振動低減のため、2002年頃から軸受けの主流はBB(ボールベアリング)からFDB(流体軸受け)へ変わっています。

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インターフェイス

現在HDDのインターフェイスは、Serial ATA(SATA)とSerial Attached SCSIが主流となり各インターフェイスの違いは下記の通りです。

Serial ATA (SATA3.0) Serial Attached SCSI (SAS3.0) *
帯域幅 △ 6,000 Mbit/s 〇 12,000 Mbit/s
最大転送速度 △ 600 MByte/s 〇 1,200 MByte/s
ケーブル長 ✕ 1m 〇 10m
接続台数** ✕ 1台 (15台)*1 〇 128台(16384台)*2
信頼性(Err Rate) △ 1*10^13 〇 1*10^14
コスト 〇 安価 × 高価

*現時点でSAS4.0は制定されているが、HDDは未発売であるためSAS3.0で記載
**チャンネル当たりの最大接続台数
*1ポートマルチプライヤを使用した場合の規格上最大接続台数
*2 SAS Expanderを使用した際の規格上最大接続台数

Workload

近年HDDメーカーのスペックシートに記載されているWorkloadですが、HDDの信頼性(MTBF, AFR)を確保するため規定されてます。

*MTBF…Mean Time Between Failure平均故障間隔
*AFR…Annual Failure Rate年間故障率

Workloadは、年間の総読み書きのデータ量で表記されます。

  • 60TB/y、180TB/y、550TB/y

実際のデータは、SMART情報にて取得が可能です。

ヘリウムガス封入HDD

大容量のHDDにヘリウムガスを封入したモデルが出てきておりますが、主な目的は以下になります。

  1. ディスクの振動低減による、「ヘッド位置精度向上」と「ヘッド浮上量の安定化」
  2. ヘッド/ディスク間の空気抵抗低減による、「発熱低減」(低消費電力)

そのためディスクの多実装には必須になっております。

また、密閉(溶接)して製造されるため、スタンダード製品より製造や修理が課題になります。

CMRとSMR

CMR=Conventional Magnetic Recording(従来型磁気記録方式)

SMR=Shingled Magnetic Recording(瓦書き磁気記録方式、シングル磁気記録方式)

SMRは、従来型磁気記録方式に比べTrack間Gapのdead spaceの有効利用ができ、~20%程度の記録密度の向上につながってます。
ただし、Random Write性能は低下するデメリットがあります。
(Sequential W/Rは、問題なし)

さて、性能対策として、”CMR+SMR MIX”を採用ディスクのOuter Zone(外周)にCMRを採用しキャッシュ領域として使用、Middle/Inner ZoneをSMRにして容量を確保する方式にすることにより、従来通りの性能を実現しつつ高密度化で容量単価を抑えたHDDとなっています。
ただし、RAIDやキャッシュ領域を使い切るなどの使用方法では、性能が落ちますので使用用途に応じて選択する必要性があります。

◆  ◆  ◆

HDD編は以上となります。如何でしたか?

これからも、様々な最新技術を投入し大容量化に進んでいくHDD、容量が大きくなることは、それだけデータが多くなってきていることの証でもあります。
その為、データ消去の重要性について考えませんと、大変な事態を招く恐れがございます。

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