HDD、SSDの基本や動作などを進めてまいりましたが、第5回目の技術講座は、データリカバリーについて、ご説明いたします。
【前回までの技術講座】
~データ消去の重要性について~ ハードディスクドライブ(HDD)技術講座【第1回】
~データ消去の重要性について~ ハードディスクドライブ(HDD)技術講座【第2回】
グリットアーツ技術顧問
鈴木 寿人
1980年 山形富士通株式会社入社、HDDの設計・開発・製造に従事。データ消去・データリカバリビジネス立ち上げ、日本初(世界2番目)米NSA認定データ消去装置の開発を行う。以降都築電気株式会社を経て、2021年にグリットアーツ技術顧問に就任。
データリカバリーとは
HDD/SSDの不具合により、ストレージを認識できない、内部のデータ(ファイル)を読み出せない場合に、復旧を行う事。
リカバリー(詳細後述)には、費用・時間が掛かるため、日頃からの注意が必要。
- 定期的バックアップ
- RAID(冗長性)、などなど
不具合原因
皆様は、バックアップやRAIDなどは行っていますか。
さて、データリカバリーが必要になるのは、何かしらの不具合が要因としてあります。
【不具合原因】
HDD | SSD | |
---|---|---|
操作ミス | ファイル誤消去 静電気 電源断・瞬断 振動・衝撃 | ファイル誤消去 静電気 電源断・瞬断 |
ソフトウェア | ファームウェア バグ | ファームウェア バグ |
ハードウェア | HDI(ヘッドクラッシュ) 部品故障
| コントローラ NANDチップ |
リカバリー方法
リカバリーが必要になった際、どのようなリカバリー方法があるのでしょうか。
【リカバリー方法】
内容 | リカバリー方法 | |
---|---|---|
論理障害 | 誤消去(管理テーブル消去) | 市販ツール |
管理テーブル破壊 | 業者専用ツール (RAIDは難度高い) | |
物理障害 | 故障部品交換の修理後に 作業実施 | 業者専用ツール |
リカバリー方法がわかったところで、次にリカバリーについてご説明いたします。
リカバリー成功率
リカバリー成功率は、約90%と言われております。
ただし、全ての障害に対してではなく、論理障害は90%以上となり、物理障害はリカバリーが難しく、HDI(ヘッドクラッシュ)障害に至っては、ほぼ不可になっています。障害内容により成功率が変わってくるものかと思います。
最新のHDDに至っては、技術が高度になり制御が複雑になっているので、新しい製品が出るごとにリカバリー成功率は低下しています。
例えばヘリウムガス封入品は、カバーが溶接されているため通常の分解が困難になっています。
NAND Flash製品は、SD カード,USBの復旧率は高く、SSDは、コントローラチップ交換を行うが、F/Wが複雑で今後の課題でもあります。
実は、RAID構成のリカバリー需要は実は多く、理由としては、複数台構成であり同時期の製品で構成されているので、不具合の内容によっては、RAIDの再構築などの負荷が高くなった際に、壊れる可能性があります。また、作業ミスなども考えられています。
リカバリーをメーカーが行わない理由
以前は、富士通が行っていたが、現在は、シーゲート社がデータ復旧サービス付きディスクの販売を行っている。ただしエンタープライズ製品には対応していません。
ではなぜ、メーカーが対応しないのでしょうか。大まかに考えられるのは、下記のようなことからだと思われます。
- ディスク不良の場合、費用を請求しにくい。
- 有償サービスとしても、ビジネスとしては難しい。
ディスクメーカーは、保証内の製品交換を行うが、内部データの保証はしていません。それは、ディスク本体より内部データの価値が高い場合があるためと考えられます。
リカバリー例
次に例として、東日本大震災で海水水没したHDDのリカバリー方法をご紹介します。
- PCBは、同モデル新品と交換
- ディスクエンクロージャーを分解し、ディスクを取り外し純水、超音波による洗浄を行う
- 別のディスクエンクロージャーにディスクを取り付け
- HDDをテスターにつないで、立ち上げおよび動作確認(書き込みは不可)
- データを別のUSBディスクなどへ書き出し
という流れで、データリカバリーが行われます。
さて、データリカバリーのご説明は、ここまでです。いかがでしたでしょうか。
ディスク容量が上がっていく今、大量のデータを無くしてしまう危険性が高まり、データリカバリーも100%ではありません。バックアップや冗長化を考えてみてはいかがでしょうか。
弊社では、データ消去だけではなくリカバリーのご相談も承っております。ご心配なことなどありましたら、お気軽にお問い合わせください。
これからも、様々な最新技術を投入し大容量化に進んでいくHDD、容量が大きくなることは、それだけデータが多くなってきていることの証でもあります。
その為、データ消去の重要性について考えませんと、大変な事態を招く恐れがございます。
データ消去・処分でお困りの企業様、是非弊社のデータ消去サービス「Security Concerns Free」をご検討ください。
弊社には、累計22,000台のサーバ稼働をささえている熟練のエンジニアが多数在籍しております。
もしサーバ管理でお悩み事がございましら、弊社の無料相談窓口をご利用いただけたらと思います。
ぜひお気軽にご相談ください。