ディスクの基本的構造や動作、データ復元などをご説明してきましたが、第6回は主題となっておりますデータ消去についてご説明いたします。
SSDの基本構造
HDDの基本構造
グリットアーツ技術顧問
鈴木 寿人
1980年 山形富士通株式会社入社、HDDの設計・開発・製造に従事。データ消去・データリカバリビジネス立ち上げ、日本初(世界2番目)米NSA認定データ消去装置の開発を行う。以降都築電気株式会社を経て、2021年にグリットアーツ技術顧問に就任。
なぜデータを消去しないといけないのか?
データはなぜ消去しないといけないのでしょうか。
ディスク内のデータは、ほとんどが個人や企業の機微なデータであるため、第三者へ流出すると個人のみならず社会的な影響が大きくなります。
企業の場合は、金銭的や社会的な制裁を受ける可能性があります。
そのため、廃棄・再利用前に、確実にデータ消去を行う必要があります。
2018年 個人情報漏えいインシデント 概要データ | |
---|---|
漏えい人数 | 561万3,797人 |
インシデント件数 | 443件 |
想定損害賠償総額 | 2,684億5,743万円 |
一件あたりの漏えい人数 | 1万3,334人 |
一件あたり平均想定損害賠償額 | 6億3,767万円 |
一人あたり平均想定損害賠償額 | 2万9,768円 |
情報漏えいの事例
ディスク関連の情報漏えいについて過去の事例をご紹介します。
- 中古パソコンを購入したら、前保有者のデータが残っていた。
- 中古ディスクを購入したら、前のデータが残っていた。
- システム保守会社の社員が、公的機関の交換したHDDをインターネットオークションサイトで販売し、購入者から指摘された。
- 業務用パソコンの入れ替え時に、ルールに反し業務データのバックアップを個人所有パソコンのハードディスク上に保存し、その後フリーマーケットで販売し、購入者から指摘された。
などなど、様々な事例がございます。
また、故障したHDDからもデータのリカバリーが可能ですので、適切な消去が必要になります。
消去方法
では、次に消去方法についてご説明します。
消去方法 | HDD | SSD |
---|---|---|
ソフト消去 -HDD/SSDを再使用可 |
| – 同左 |
ハード消去 -再使用は不可で、 材料(素材)を再利用 |
| – 同左 |
世界的に以下の3手法にて情報漏えいを防止
データ消去ソフト | リースやレンタル業者へ返却する場合(リユース) |
磁気データ消去 | 産業廃棄物として処理する場合(廃棄リサイクル) |
物理破壊 |
各消去方法について詳しく解説いたします。
ソフト消去 (再利用可能)
方法 | 内容 | 消去レベル |
---|---|---|
ファイル消去 | 簡便だが、FAT情報のみ消去 | × |
“暗号鍵”消去 | 簡便だが、メーカのツールが必要 (データは残留) | 〇 |
全面データ上書き | HDD/SSD それぞれ課題有(下記) | 〇~◎ |
消去レベル x=復元可能 △=一部復元可能〇=データ残留 ◎=完全消去
パソコン上の「ファイル消去」は、FAT情報の消去のみで、媒体上のデータは残っているため、市販ツールで、簡単に復旧可能です。
全面データ上書きは、基本的には問題ないが、「完全消去」でないため、以下の課題があります。
- HDD
ヘッドの位置決め精度のバラツキがあるため、複数回が安心。(消去規格あり)
そのため長時間必要になります。(数時間~十時間以上/台) - SSD
Over Provisoning領域の消去が課題。
ハード消去 (再利用不可能)
方法 | 種類 | 内容 | 消去レベル |
---|---|---|---|
物理破壊 | ドリル穴あけ | 簡便・安価だが、データは残留 | △~〇 |
粉砕 | 設備要 | 〇~◎ | |
磁気消去 | 永久磁石 | 連続作業可 | 〇~◎ |
電磁石 | 連続作業不可 | 〇~◎ |
消去レベル x=復元可能 △=一部復元可能〇=データ残留 ◎=完全消去
物理破壊について
ドリル穴あけについては、DISKの穴あけだけでなく、基板やCHIPの破壊も行う必要があります。
粉砕については、大規模な設備が必要となり粉砕後の処理も併せて検討する必要があります。
磁気消去について
特徴 | |
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永久磁石 |
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電磁石 |
|
発生磁界が低いと消去が適切に行われないので注意が必要です。
物理は穴あけや粉砕なので、どのような事か想像はできますが、磁気での消去は外見上からも判断できません。
次回は、磁気消去の原理を見ていきます。
弊社では、データ消去だけではなくリカバリーのご相談も承っております。ご心配なことなどありましたら、お気軽にお問い合わせください。
これからも、様々な最新技術を投入し大容量化に進んでいくHDD、容量が大きくなることは、それだけデータが多くなってきていることの証でもあります。
その為、データ消去の重要性について考えませんと、大変な事態を招く恐れがございます。
データ消去・処分でお困りの企業様、是非弊社のデータ消去サービス「Security Concerns Free」をご検討ください。
弊社には、累計22,000台のサーバ稼働をささえている熟練のエンジニアが多数在籍しております。
もしサーバ管理でお悩み事がございましら、弊社の無料相談窓口をご利用いただけたらと思います。
ぜひお気軽にご相談ください。